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地域事情に寄り添ったデジタルデバイド対策|香春町での取り組みを紹介

今回は、北九州センターの山﨑 源太さんにインタビューを行いました。
山﨑さんは、「人生100年時代を見据えたデジタルデバイド対策」の取り組みから、2022年度SCSK ServiceWare Awardサービス創出分野にてSilverを受賞しています。
この取り組みを始めた経緯や実施した講座のこと、アワードにエントリーしたきっかけなどを幅広く伺いました。

【プロフィール】
■山﨑 源太|ビジネスサービスグループ 営業開発本部 地域共創推進部 事業推進課 兼 営業課
北九州センター/2016年8月中途入社
コールセンターの受電スタッフとして入社後、テクニカル窓口のスーパーバイザーを経験。その後、北九州センターの採用担当を経て、地域共創推進部にて公共事業のサポート業務に携わる。2023年12月に営業課に異動。現在は事業推進課と営業課を兼務している。

プレミアム商品券のデジタル化を機に公共営業に異動

Q.現在の仕事内容を教えてください。
山﨑さん:
公共営業担当として、デジタル商品券や行政DX化の課題解決、その他の自社サービスを広める仕事をしています。
2023年4月頃、福岡県内ではプレミアム商品券をデジタル化する動きが強くありました。当時はスーパーバイザー業務と兼務しながら、香春町(かわらまち)と隣の川崎町のデジタル化のサポート業務に携わっていました。
それを機に2023年12月に営業課へと異動となり、現在は営業担当兼、他センターのサポートを行う事業推進課として、九州全域を担当しています。
公共分野で他市に営業をする際には実績や話題が必要となるため、切り口として他市でも同様に問題になっていることや解決したいことをテーマに話しています。

デジタル化から取り残される人を減らすことが目的

Q.この取り組みを始めた経緯を教えてください。
山﨑さん:
SCSKサービスウェア北九州センターの拠点は、福岡県田川郡香春町(かわらまち)にあります。
その香春町と2022年7月8日SCSKサービスウェアは包括連携協定を締結しました。

www.scskserviceware.co.jp

この協定の中には、住民サービスの向上や行政事務の効率化に加えて、「SDGsの取り組みに関すること」があります。その目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」にも通じるウェルビーイングは、デジタルデバイド(情報格差)に関連しています。
ウェルビーイングとは、満足した生活を送ることができている状態、心身と社会的な健康を意味する概念のことです。
デジタルデバイドが存在すると、デジタル化に取り残される人々が増えるといった悪影響があります。たとえ行政がデジタル化を推進しても、高齢者などデジタル技術に不慣れな人々が消極的な反応を示し、行政サービスの利用が進まないことがあります。デジタル化には多くのメリットがありますが、メリットを伝え理解してもらえないと普及が難しい状況です。 
デジタルデバイドに取り組むことで、健康アプリの利用やデジタル決済によるポイント付与、給付金の受け取り、行政手続きのオンライン化など、デジタル化の利点を全ての人が享受できるようになります。ウェルビーイングの向上にもつながることから、デジタル化から取り残される人々を減らすことが重要だと言えるでしょう。
誰もが恩恵を受けられる社会、町づくりを目指していくためには、デジタルデバイドの解消が不可欠と我々は考えました。

これからは「人生100年時代を見据えたデジタルデバイド対策」が求められます。新しい行政サービスにも積極的な参加を促す必要があります。
デジタル化による便利さの一方で、詐欺の手法も多様化しており、オレオレ詐欺だけではなく、電子マネーを自宅から送金させるなど、抑止が難しい手法も増加しています。「デジタルは怖い」と先入観を持たれてしまうと、いくらメリットを伝えたところで情報格差を埋めることはできません。
また、使い方を教えるだけでなく、何に気を付けて使うと安心なのかを伝えることで、「怖くて使えない」という方を減らすことにもつながるのではないでしょうか。
そのため、セキュリティに関連した講座を実施し、さらに「楽しく使うこと」もセットにしました。

2021年にデジタル庁が発足し、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」とミッションを掲げています。日本全体で見ても、労働人口減少による人手不足もあり、行政は窓口DXなどのデジタル化を促進しています。その一方で、デジタル技術を使いこなせない高齢者世代の孤立も問題です。
誤解されやすいのですが、決して高齢化そのものが問題なのではありません。デジタルに不慣れな方に情報が届けられないことが問題であって、年代に関係なく情報を知っているかどうかはとても重要です。

また、コミュニティの減少も問題点のひとつです。国土交通省の調査によると、2003年時点では65歳以上の高齢者による孤独死は1,441件でしたが、2018年には3,867人と15年でおよそ2.7倍増加しています。さらには、コロナなどで人が集まる機会が減りました。

情報格差を埋めることで、行政サービスを知るだけに留まらず、趣味を広げたり共有したりすることも可能です。例えば、スマートフォンを使うと動画や音楽の視聴を楽しんだり、趣味を通じて人とつながったりできます。生け花やアクセサリーなどの作品をSNSに投稿したことで人との交流が生まれた事例もあり、人とのつながりを持つことで孤立をなくしたいという思いを持っています。

講座の実施は地域のコミュニティ形成にも役立った

Q.講座を実施してみていかがでしたか?
山﨑さん:
2022年10月から毎月1回の講座を始めましたが、開催当初は自社コンテンツがなく、総務省などに教材提供をお願いし、それらを活用した内容で実施しました。
講座終了後のアンケート結果や町の担当者と打ち合わせをしながら内容を決め、町民が使うと想定される講座を作りました。
LINE、アプリ、迷惑メール、動画、デジタル決済、施設予約、旅行予約、オンラインショッピング、写真関連、病院予約などを取り扱い、多岐に渡った内容になっています。
安心・安全をテーマとした講座では、香春町の公衆Wi-Fiや公式LINEについて紹介し、登録を促したこともありました。
公衆Wi-Fiは、災害があった時などに使えますし、公式LINEは情報を受け取る手段にもなります。
情報を受け取れる方を増やすことは、デジタルデバイド、情報格差の是正につながるのではないでしょうか。

2023年に香春町は、デジタル商品券「こはるペイ」を発行し、その販売時期に合わせて商工会や町と話し合い、利用者に向けた「こはるペイ講座」を実施しました。
結果として「こはるペイ」は売り切ることができ、その後の分析によると、実際に購入された方の年齢層は50代以上が多く、全員がきちんと使用されていました。
デジタルという言葉だけが先行すると難しいと思われてしまいがちですが、事前説明や不安な方をサポートすることで、前向きに使っていただけたのではないかと思います。
デジタル商品券に限らず、健康ポイントなどの電子化も進んでいますが、「使ってみようかな」と思ってくれる方が一人でも増えてくれると嬉しいです。

これまでさまざまな講座を実施してきて、やって良かったと心から思っています。
特に、参加者から「このメールは詐欺?」など、対面で質問していただいたことが解決につながり、ほっとした表情を見ることができました。
SDGsとも通じる社会的な健康は、コミュニティの形成ならびに孤立する方を減らすことでもあります。参加者の中には「習う」こともそうですが、「集まる」こと自体にが嬉しいと感じている方もいました。
実際に講座の中でグループLINEを作る方もいて、コミュニティ形成のきっかけになったと実感しています。
講座は社会的な側面や町の考えなどを咀嚼しながら作ってきましたが、商工会の方や行政職員の方の協力があって進められたことですので、とても感謝しています。

講座開催の周知と集客に心を砕く

Q.苦労したことや大変だったことはありますか?
山﨑さん:
講座開催の周知と集客には苦労しました。
開催告知をスマートワークチョイスにある北九州センターのお知らせに載せたりしましたが、デジタル上で周知するとデジタルコンテンツを見ている人しか集まりません。
そこで、町の職員さんたちの協力を得て、LINEやリーフレット、SNS、役場窓口で興味のある方に伝えてもらいました。
本来、香春町の公式LINEを登録していない人や、全く使っていない人に来ていただくことが目的なので、どうやって参加者を集めるかは課題だと思っています。
それでも、申込が定員を超える月もあり、その時は上限を超えた人数で参加していただきました。

アワードにエントリーしたきっかけは事業部長の声

Q.SCSK ServiceWare Awardにエントリーしたきっかけを教えてください。
山﨑さん:
香春町でデジタルデバイド(スマホ講座)を行った後、他市でも実施しました。当時の事業部長から「サービス創出分野にエントリーしてみては?」と声をかけられたことがきっかけで、SCSK ServiceWare Awardへ応募することになりました。
そして、「人生100年時代を見据えたデジタルデバイド対策」の取り組みが評価され、2022年度SCSK ServiceWare Awardサービス創出分野にてSilverを受賞することができました。

▼SCSK ServiceWare Awardとは?
事業・営業・間接部門問わず、SCSKサービスウェアで働く全社員が参加できる社内表彰行事です。
各分野で活躍する拠点・プロジェクト・社員の"取り組み"に陽を当てるとともに、日々の業務で行われている創意工夫や改善を全社の強みとして共有することを目的に、2013年より毎年開催されています。

plus.scskserviceware.co.jp

親子に向けたネットリテラシー教育も構想中!

Q.今後の取り組みを教えてください。 
山﨑さん:
現在の課題は、開催場所です。参加者の移動手段がネックだと感じています。
特に地方では公共交通機関が充実していないことから、自家用車での移動が主になります。
最近では人手不足の影響からタクシーの台数も減っており、車の運転ができない方にとっては移動が難しい状況です。
そのため、近場の公民館などで実施しやすいように出張講座を行い、コミュニティの輪を広げていきたいと考えています。町の良いところがデジタルを通じて拡散されることで、社会全体が良い方向に向かうことを期待しています。
 
今は月1回のペースで講座を開催していますが、今後開催頻度を増やす時に、我々だけでは対応できなくなることも出てくるでしょう。そのために、香春町の中で先生となるスタッフを育成して、人を集めて教える仕組みを作っていきたいです。

今回はデジタルデバイドに焦点を置きましたが、参加者の対象を広げてネットリテラシー教育(講座)を親子で参加してもらうことも考えています。
例えば、不登校の方など、なかなか教育を受けることができない方に向けて、生活リズムの乱れやネットいじめ問題などを解決する一助になればと思っています。
このような取り組みを継続していくことは、SCSKサービスウェアのブランドイメージの向上にもつながるのではないでしょうか。
町の人たちにも、当社がコールセンター以外にもいろいろな事業を行っている会社だと知っていただくきっかけになればと思っています。いつか、講座を受けた子どもたちが学校を卒業する頃に、「SCSKサービスウェアに就職してみようか」と検討していただけたら嬉しいですね。

デジタルデバイドに向き合うSCSKサービスウェア

今回は、SCSKサービスウェア北九州センターの山﨑さんにお話を伺いました。
デジタル化に取り残される人を減らす「人生100年時代を見据えたデジタルデバイド対策」は、香春町に留まらず他市でも実施しています。
「デジタル」という言葉にハードルを感じる高齢者を、講座を通じてサポートすることでアプリやサービスの利用者が増えるなど、デジタルデバイド対策における今後の可能性が伺えました。
SCSKサービスウェアでは、地域の事情に寄り添った新規事業の創出も行っています。
デジタルデバイド対策に取り組んでみたい方や、地域と連携した活動をしてみたい方、SCSKサービスウェアに興味のある方は参考にしてみてくださいね!